フィンランド出張・SLUSH視察
先日、日本のクライアントをお連れし、毎年11月にフィンランドで行われる世界最大のスタートアップイベントSLUSHの視察に行ってきました。
「学生主体でスタートしたスタートアップのイベント」と聞くと、拙いながらに若者が頑張っている、なんかキラキラしたイベントという印象を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、百聞は一見にしかず、会場照明はキラキラでしたが、イベント自体は本気度の高いプロフェッショナルな印象でした。
チケット価格に現れるSLUSHの本気度
まず驚いたのがチケットの価格設定。投資家とエコシステム関係者はなんと1000ユーロ越え。たった2日間のイベントを見に行くのに18万円ほどのチケットが必要になるわけです。しかも、Thursday Pass、Ecosystem Passというのは数がかなり絞られており、あっという間に売り切れてしまいます。(他で来ていた日本の視察団からも、出張が決まるのが遅くなってしまいチケットが買えなかったなどという話もちらほら)
<チケット価格2025>
Startup / Scaleup / Attendee € 395
Scaleup / Thursday Pass(1日目/Day2のみ) € 595
Investor / Ecosystem / その他 (2日間アクセス + Investor Day など) € 1,095
チケット1000ユーロもするってことは、これはいろんな特典がついたVIPパスということなのか?ーいいえ、そういう意味ではありません。要は「投資家とスタートアップのマッチングイベント」において、よけいな人は来ないでほしい、という運営側からのメッセージです。いわば婚活パーティを見学したい既婚者はお金を積んでください。という感じでしょうか。この背景には、SLUSHのイベントが拡大していくにあたり、来場者が多くなりすぎた経緯があるとのことでした。いわゆるテックツーリスト(投資をする立場ではないが、最新のテクノロジーやトレンドを見にくる人たち)の割合が多くなりスタートアップの人たちが投資家と十分話せなかった、それであれば来場者をしっかり吟味しようということになったそうです。(実際、スタートアップパス、インベスターパスなどには厳しい審査があります)。実際に会場レイアウトも、ピッチ用ステージ、トークステージに加え、椅子と机がずらりと並んだ“お見合いスペース“が十分すぎるほど用意されていました(しかもほぼ満席)。
学生に広く開かれたイベント
一方、SLUSHは多くの学生を巻き込んだイベントでもあります。約50人のコアメンバーに加え、およそ1600人の学生ボランティアがイベントの運営を行っています。これほど大きなイベントを仕切るのは、さぞかしベテランのイベントマネジャーたちなのかと思いきや、コアメンバーもほとんどが学生なのだとか。今回イベントの運営部隊に話を聞く機会があったのですが、とてつもなく優秀な若者たちがエネルギッシュに仕切っているイベントだということがわかりました。ボランティアは、イベント運営の仕事から、クローク担当、ボランティアスタッフのサポート担当など多岐に渡ります。彼らには、最近出版されたスタートアップのバイブル的な本が無料で支給されるなど、企業家精神の教育の場としても機能しているように感じました。
サイドイベントこそがビジネスパーソンの出会いの場
SLUSHはチケットが必要な本会場以外にもたくさんのサイドイベントが開催されます。これらは、SLUSHの運営部隊が仕切っているのではなく、運営部隊からはプラットフォームの提供のみ。各自治体や企業、大学などがそれぞれ場所を用意してイベントを開催しています。スタートアップではない、ビジネスパーソンたちの交流はむしろこちらの方が活発で、アクティブに動けばいろいろな人と繋がれる環境となっていました。誰かにやらされているのではなく、それぞれのイベントオーナーが我こそがこのSLUSHの勢いに便乗してやろう、という意気込みを感じる仕様になっており、バラエティ豊かで本格的なビジネスイベントを視察することができました。
ヘルシンキのような小さな街が、世界のビジネスパーソンを呼び込むためには同じ時期にたくさんイベントをやろうというのは理にかなっているように思います。この一体感が機能しているのが、フィンランドのビジネスエコシステムの強みかもしれません。
学びの多き出張となりました。



